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2019年10月08日 [会計・税務]

ソフトウェアのライセンスフィー

ゲームソフトウェアのライセンスにおける収益認識の事例
 収益認識に関して、従来の企業会計原則による実現主義に対して、包括的な会計基準とし収益認識基準が適用されこととなった。実現主義の下、解釈がまちまちであった収益認識基準が5つのステップに分けて体系化され、ケースによって今までの収益認識を変更すべき事例が発生する可能性がある。
1.ゲーム会社のライセンスの事例
 会社(ゲーム制作会社)は、インターネットに接続されるゲーム専用機器のプラットフォーム上で販売されているインターラクティブエンターテイメントであるアドベンチャーゲームを自社IPで製作した。
 同社(ライセンサー)は、当該ゲームの中国での販売に関してパブリシャー(ライセンシー)とソフトウェア製品使用許諾契約(期間限定ライセンス)を締結した。
 当該契約では、該当地域での独占的販売権をライセンシーに付与するもので、対象ソフトウェアの製品の純益(期間限定)の25%をライセンシーがライセンサーに支払う。また、ライセンシーは、最低保証として100,000米ドルのうち70%を契約締結時に、また、残りの30%はゲームの同地域での販売時にライセンサーに支払うものとなっている。
 なお、同ゲーム(日本語対応)のローカライズ(中国語対応)は、ライセンシーが行い、ライセンサーは契約締結時にソースコードを提供した後はライセンシーに対して提供される業務はほとんどない。
2.従来の収益認識
 我が国における収益認識に関する会計基準は、企業会計原則に「売上高は、実現主義の原則に従い、商品等の販売又は役務の給付によって実現したものに限る」として実現主義による売上計上基準が定められている。実現主義のもとで、売上高は「財貨又は役務の提供の完了」と「対価の成立」を条件に計上されてきた。
 上記によれば、契約締結時にソースコードの提供が完了し、ライセンスフィーは契約により最低保証額(100,000米ドル)が確定しているが、請求は契約締結時に70%、残りの30%は販売時となっている。したがって、役務の提供は完了しているが対価の成立は、契約時にすべて完了していないことから、契約締結時に70,000米ドルを売上計上し、ソフトウェアの販売時に30,000米ドルを売上計上することとなる。また、最低保証を超えたライセンスフィー(純利益の25%―最低保証額)はライセンシーからの報告をもって売上計上する。
3.収益認識基準の適用の論点
(1) 期間の定めのあるライセンスを供与する契約について、当該履行義務が一定期間にわたり充足されるものか、一時点で充足されるものかの判断
 ライセンス供与とサービス提供契約が一体となっている契約は、両方の約束を一括して単一の履行義務と判断するか、別個の履行義務と判断するかを決定しなければならない。上記によれば、ライセンス以外の役務提供はない。ライセンスを供与する契約が独立した履行義務である場合、アクセス権に該当するかの判断(3要件)を行い、アクセス権であれば、一定期間の履行義務の充足に従い、また使用権であれば、一時点で充足される履行義務として収益を認識する。
@ライセンスにより顧客が権利を有している知的財産に著しい影響を与える活動を企業が行うこと等
A顧客が権利を有している知的財産に著しく影響を与える企業活動により、顧客が直接的に影響を受けること
B顧客が権利を有している知的財産に著しく影響を与える企業活動の結果として、企業の活動が生じたとしても、財又はサービスが顧客に移転しないこと
上記では「知的財産に著しく影響を与える企業活動」を行っておらず、使用権を譲渡しているにすぎないため、3要件を充足しておらず、一時点で充足される履行義務として処理される。
(2) 請求が分割された最低保証のライセンスフィーの計上時期
 従来の実現主義においては、確定額を収益として計上するため、請求書を発行していないソフトウェアの販売時の最低保証の残り(100,000米ドル×30%)は、契約締結時に計上されないが、収益認識基準では履行義務の充足時点で計上されるため、契約締結時(ソースコードの提供時)に計上されることとなる。(「(1)期間の定めのあるライセンスを供与する契約について、当該履行義務が一定期間にわたり充足されるものか、一時点で充足されるものかの判断」参照)
 なお、契約締結後、何らかの理由でソフトウェアの販売に至らなかった場合、最低保証が支給されないことが考えられるが、これは変動対価として見積もるものと考える。変動対価とは、顧客と約束した対価のうち変動する可能性のある部分を言い、次のものが挙げられる。値引、リベート、返金、インセンティブ、ペナルティーほか。
 
(3) 最低保証を超えて支払われるライセンスフィー(純利益の25%−最低保証額)の収益認識のタイミング
売上高または使用量に基づくロイヤルティは一般的に変動対価となるが、知的財産のライセンス供与に対して受け取る売上高または使用量に基づくロイヤルティが知的財産のライセンスのみに関連している場合、あるいは当該ロイヤルティにおいて知的財産のライセンスが支配的な項目である場合には、会計基準第 54 項及び第 55 項(変動対価の見積もり制限)の定めを適用せず、次の@またはAのいずれか遅い方で、当該売上高または使用量に基づくロイヤルティについて収益を認識する。
@ 知的財産のライセンスに関連して顧客が売上高を計上する時または顧客が知的財産のライセンスを使用する時
A 売上高または使用量に基づくロイヤルティの一部または全部が配分されている履行義務が充足(あるいは部分的に充足)される時
 上記のケースでは、売上高に基づくロイヤリティであり、履行義務の充足される時(契約期間の最終期限)でロイヤリティーの金額が確定され、そのタイミングで計上されることとなる。

以上


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